活動内容
いっぷく会便り 2018年6月号
平成30年6月1日 発行
NPO法人 KHJ全国ひきこもり家族会連合会 静岡県「いっぷく会」
会長 中村 彰男
日時
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平成30年5月13日(日)
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テーマ
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「ひきこもるこころを理解する ~当事者の声から~」
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講師
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一般社団法人ひきこもりUX会議 代表理事 林 恭子氏
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会場
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静岡県男女共同参画センター「あざれあ」
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PDFファイル201806.pdf
5月例会のご報告
5月例会は、5月13日(日) 静岡県男女共同参画センター「あざれあ」で開催しました。
◆準備会 10時~
16名の参加をいただきました。まず「いっぷく会便り5月号」「旅立ち4月25日第87号」を入れて、出席者への配布、欠席者・関係機関への郵送作業を行いました。そしていくつかの報告事項、打ち合わせ事項について話し合い、あとは昼食をとりながら楽しい歓談の時間を過ごしました。弁当持参ですが、例会に少し早めに出かける感じで参加してみて下さい。都合のつく時間からで構いませんので、是非ともゆっくりした時間を共有しましょう。
◆例会 13時15分~16時30分 参加者49名(非会員、当事者、初参加者含む)
◇中村会長挨拶 お忙しい中をご出席ありがとうございます。予て懸案でありました事務所問題、設立以来中津川さんの自宅でお願いしてきましたが、6月より静岡市番町市民活動センター内の貸ブースを利用できるように決まりました。詳しくは別途お知らせしますが、関係図書、各種情報も揃え、話し合いコーナーもありますので、いつでも誰でも自由に利用できるようになりました。ご利用いただきたいです。今月の「旅立ち」にもありますが、メディアに取り上げられるようになったこともあり、色々な動きが出てきています。いっぷく会としても多様な話、情報を取り込んでいきたいと考えています。皆さんのご協力をお願いします。
◇連続学習会
テーマ「 ひきこもるこころを理解する ~ 当事者の声から ~ 」
講師 一般社団法人ひきこもりUX会議 代表理事 林 恭子氏
講師は、横浜市在住。高校2年で不登校。20代半ばでひきこもりを経験。信頼できる精神科医や「ひきこもりについて考える会」での多様な人々との出会いを経て、30代半ばで回復に向かう。
現在は、NPO法人でアルバイトをしながら「ひきこもりUX会議」「新ひきこもりについて考える会」「ヒッキ―ネット」のメンバーとして、更に4月に設立したNPO法人「Node」の副代表理事として活躍している。
Ⅰ.体験談
・父サラリーマン、母専業主婦、三姉妹の長女として生まれる
父は転勤族、北は石巻~南は福岡まで10か所、常に転校生で故郷が無く育った。幸いいじめなどには合わなかったが、高校二年(四国)ゴールデンウィーク明けに突然学校に行かれなくなった。身体症状に出る、朝学校に行こうと思うけれど、頭が痛い、微熱がある、起きられない、そのうち寝られない、食べられない、胃が痛い、お腹が痛い、段々動けなくなる、あらゆる症状が身体に出てしまう。病院を転々、検査入院など数カ月、何が起きているのかが分からない状態だった。翌年春九州へ、一日行って行かれなくなる、教室に入ったが、ここに居たら自分が潰されてしまう事が強く分かった。帰宅後高校は中退すると両親に伝えた。その日を境に少しは回復していた体調が逆戻り、そこからは一年以上寝たきり、家の中を這っていた、本当に心身の状態が悪かった。
・なぜ、不登校ひきこもりになったのか
学校が合わなかった。良い子ちゃんだったが、地方の学校では校則が厳しく、白いソックスは三つ折りにしなさいと、それをなんでなのと聞いても誰も納得のいく答えをしてくれない、その他の校則でもとても理不尽だと思った。
体罰は普通、教師の暴力、机を蹴飛ばす、その理由は子供が気取っている。そんな学校とは何なんだろう、教師は何をやってもいいのか。自分がおかしいのかと思った、しかし誰にも言えず、その思いが溜まりたまって、処理出来なくなって学校に行けなくなる、そして20代でひきこもる。
・20代になって、母とのバトルが始まった
母親から、あなたはどう思うの、どうしたいの と聞かれることが無く育った。少しでも意思を伝えるが、それはダメ、意思を持つことが出来てなかった。そして、父親とは対照的に厳しい母、習い事、勉強、良い学校・立派な会社の道、それしかないと信じ込んでいた。そこからドロップアウトしてしまったら、もう自分の人生が終わったとの強い思い込み、これはひきこもり当事者の多くの方がそうである。高校中退、これは、私の中であってはならないことだった。当時は不登校という言葉は無く、登校拒否、相談するところも無く、17歳で母が見つけた病院へ一人で行く、その後、東京での大学、しかし2度目の終わりを迎えた、大学中退、こんな状態が続くと死んじゃうんじゃないかと病院に通う、色んな薬を飲む、学校に行かないなら働きなさい、小遣いがストップ、近所の学習塾でのアルバイトを始める。その後も音楽教室の受付、デパートのバックヤードでの伝票管理など午後、夕方のアルバイトを。しかし身を削る思いのあまり27歳で行けなくなる、その後2年間ひきこもる。
16歳で不登校、昼夜逆転が20年続くが、昼夜逆転にも意味がある。昼間は世間が活動している時間帯、その時間にダメな自分がその世界に居るのは許せない。真夜中は、世間は静か、ささやかに存在を許せる時間、それで自分を保っていた。
20代になってから、過去の母との関係がリアルにマグマが吹き上げるように思い出され、遅れて来た反抗期、しかし母親には受け入れられなかった、バトルが始まった、約10年。親子だけど別々の人間だった、親子だから分かりあえる、そうではなかった、それを悟った。だから、母に向かうのではなくて、自分のことをちゃんと考えようと思うようになった。
・ひきこもっていた時期
「生きる屍」と思っていた。起きている間中自分を責めている、なんでこんなことになってしまったのか、このまま生きていても幸せになることは絶対あり得ない。どっちを向いて歩いて行ったら自分が生きることが出来るのかが分からない、混乱状態。世の中で最も自分がダメな人間だと思っている、当事者の多くの方がそう言う。
起きている間中自分を責めるので、寝て逃げる、当事者会話で「寝逃げ」と言う、今だったらゲーム、テレビ、ネット、苦しさから逃れるための手段で、決して楽しんでいない、楽しんでいるならすごくいい傾向です。
・ひきこもっている状態
<地上の世界> 普通の人
0地点 --------------------------------------------------------------------------
<地下の世界> ひきこもる 息も出来ない、真っ暗闇、暑い もがき苦しんでいる
地下から地上に向かって0地点にたどり着けたのが36歳、20年かかった。
天気が良いから散歩でも、ちょっと外に出たら楽しいから、風にあたってみたら気持ちいいから、だけどこれらは何を言っているんだといった気持ち。なぜなら、ここは地中だから太陽も照らないし風も吹かない花も咲かない、全て地上の世界での話なので、全く届かないし意味が無いこと。
どうやって地上にたどり着くか、自分で何とかしなければ、自分なりに頑張って来たけれど、もうこれ以上どうにもならないんだと、死にたくは無いけれども、こんなダメな自分が生きていける場所はこの社会の中ではもうないだろうから、もうここで終わりにするしかないと強く思った。死を思うようになった、27歳。もう誰からも傷つけられたくない、誰のことも傷つけたくない、でも生きて行くのであれば、それは絶対に避けられない。
それを引き受けることが出来ないのであれば、ここで止めようと思った。実行方法も考えたが、ふと自分の足のつま先が、死ではなく生きる方を向いた時があった。それを自分が見ている、やっぱり生きる方を選んだのだと、これは自分が決めたのではなく、意思を超えた所で生き物として生きたいと思っている感覚を持てたことが、再び生きる意志につながる。
・27歳の時、相性のいい精神科医と出会う
エネルギーを取り戻す。8人目の先生、一年間の繋ぎの先生だったので期待もしなかったが、半年後「ようやくあなたの事が分かってきた」と言った、症例ではなくて一人間として見てくれていた。学校の中でのおかしいと思ったことなどを話すと、あなたの感覚が生き物として正しいのでは、そっちの方が本当じゃないのと。エネルギーを溜めるにはプラスの要素が必要、しかし一個でもネガティブなことがあると一気にゼロとなる。母とのやり取りがそれだった、何とかエネルギーが溜まって溢れ出した時が20年経った時だった。プラスの思いを持ってもらう事がいかに大切か。
・30代に入り、ひきこもりについて考える会でのひきこもり当事者との出会い
苦しかった思い、親に対する思い、おかしいと思っていることに対してちゃんと話すことができて、本当に救われ、勇気、生きて行くエネルギーをもらった。そして、36歳で0地点にたどり着いた。
地下の世界、土の中での生きて行く苦しみは、全く次元の違うものであることはどうかご理解下さい。
Ⅱ.親御さんに向けて
・日本語が通じていない
声を掛けたり、気持ちが聞きたい、だけどなかなか言ってくれない、これは日本語が通じていないから。
なぜなら、ひきこもっている人は命がけで問いかけている、なぜ生まれて来たのか、なぜ生きているのか、働くとはなんだろうか。だから、本当、本物の言葉じゃないと通じない、心の一番奥底、そこで掴んできたものを投げないと届かない。
親御さんにも自分に問うて欲しい、私は今日この日までどんな思いで生きて来たか、子供のころどうだったろう、親子関係はどうだったか、夫と妻とどういう関係だろう、父親として母親としてどういう風に自分は今まで生きてきたか、この先私はどんなことを心の中心に据えて生きて行こうと思っているのか。そいう事を考えて、本もたくさん読み、その中で掴んできた言葉は必ず届く。
・親に伝えたいこと、して欲しいこと
①旅行に行って欲しい、出来れば3週間の海外旅行
たまには誰もいない家の中で伸び伸びと一人で自由にいられる時間が欲しい
②自分の人生を生きて欲しい、楽しく
自分のことを心配して見てられると負担になる
・この子の人生だと腑に落ちることも大事
選択権は、この子にあることを心の底から分かってしまうと、親はみるみる変わり、子供も動き出す傾向にあります。
・ひきこもりQOL(ひきこもっている生活の質を高める)
家を居心地良くする、北風と太陽では、北風ではなく太陽を
・NGワード
同世代と比べること、誰々さん結婚したよ、
誰々さん就職したよ、お父さんもうすぐ定年だから
・声掛け
社会問題に関心がある、
ニュース等を見ながらどう思う、趣味・・
・言葉使い
・・・べき ・・・よかれ は気を付けてほしい言葉
・御用聞きの支援
分かってもらう事よりも、分かってくれようとしていることが大事。言ってきたら、そのまま実行、条件は付けないこと、言われたまま、但し無茶な要求、出来ないことは出来ないと
Ⅲ.支援について当事者活動
出発点は、なぜ支援が就労支援しかないのか、20年近く経つが国や行政民間団体がやってきたのはほぼ就労支援、ほとんど上手くいかなかった実態が明らかに、これは当事者の思いに沿っていないからで、私達の声を聞いて欲しい、支援を構築する場に私達を入れて欲しい。誰にとっても生きやすい社会、色んな生き方があって色んな人がいて、それが認められる社会でなければひきこもりの問題は無くならない。
必ずしも経済的自立、就労がゴールではなく、その人が幸せになれるかどうかだと思っている。就労に向けた支援ではなくて、その人にとってどう生きて行くことが幸せなのか、そのサポートが支援でなくてはならない。
ひきこもり女子会全国キャラバンで地方を回ったが、サポートステーションの評判は悪過ぎる、窓口に行ったが良かったはゼロ、行かなければ良かったがほとんど。説教された、説得された、たらい回しにされた、ちゃんと話を聞いてくれないがその理由。
女子会、自助会を通じて、まずは一人ではないことを知ってもらう、生きていてもいいことを分かってもらう。
就労支援ではなくて、その前の支援、一人ひとりの存在を丸ごと認められる場の支援が必要。
自分と同じ経験をした人と出会う事で勇気をもらえる、小さな自信となり、勝手に動き出すようになる。
ひきこもり女子会全国キャラバンが今年度も始まります、今まで1年半で44回1700名、行政の方も参加、窓口では相談はわずか、それも男性、女性のひきこもりの多さに驚き意識が変わる、今後も行政と連携で実施予定。
女子会は、10代~60代 主婦25%、介護を抱える、この先が不安、ヘルパーさんに家に入られることが怖いなど、様々な問題が生じている、兄弟との関係もある。それぞれの立場の方が知恵を出し情報交換しながら対応していかなければならないと感じています。
<NPO法人Nodeの紹介、ひきこもり当事者・経験者主体の全国に拠点を持つ日本初の組織>
<ひきペディアの紹介、ひきこもりに関する総合情報ポータルサイト>
<ひきこもり女子会のブックレットの紹介> <ひきポス創刊号「なぜ、ひきこもったのか」の紹介>
・今後の目標、グループホームのようなもの、一人になっても皆とゆるく繋がりながら暮らしていける、シェアハウス、地方で暮らす、社会起業家・支援者の方たちとの町おこしなどでの連携の模索。UX会議のテーマの一つが生存戦略、生きていっていいはず、出来ることはやって行こうと思っています。
・最後に、自立の前に自律力を、これは自分の内なる声に従う力、これを大事にする、この自律力が付いてくると適応力が付いてくる、そしてはじめて自立に向かう事が出来る。本当にそう思います。
<著書の紹介> 『「普通がいい」という病』、 『仕事なんか生きがいにするな』 泉谷 閑示
『不登校・ひきこもりが終わるとき』 丸山 康彦
この後、質疑応答、貴重な体験談、親御さんへのアドバイスなど大変ありがとうございました。
「NPO法人Node」の設立、記念イベントが開催されました
5月例会で講師をして頂いた林恭子さん達が中心になって、NPO法人「Node」(ノード)が4月19日に設立されました。「Node」とは「繋ぎ目」「結び目」を表す言葉で、ひきこもり等の生きづらさを抱える人たちと社会をつなぐ「結び目」となり、個性的な自己実現や多様性・リカバリーを認める社会の実現に寄与するためにとしています。ひきこもり当事者・経験者主体の全国に拠点をもつNPO法人です。
「社会的・心理的・経済的等の複合的な要因から、不登校やひきこもり等の生きづらさを抱えたり、孤立して貧困状態に陥る人が増えています。これに対して、行政等の各種支援も少しづつ拡充されてきていますが、行き届いていない人がまだまだ多いのも現状です。このため、ひきこもりを始めとする、生きづらさや孤立している当人たちを繋ぎ、情報共有や発信を目的とする当事者主体組織の必要性を感じ、今回の設立に至りました。」と。
その設立イベントが5月19日東京で開催され、中村会長、中谷で参加してきました。
今回は、ひきこもりの当事者や経験者らが就職や働くことについて、課題や解決策などを話し合うというものでした。当日は200人余の参加で、NHKニュースでも報道されました。第1部は、精神科医の斎藤環氏・ジャーナリストの池上正樹氏の対談「ひきこもりと働くということ」第2部は、当事者・経験者と、雇用した企業経営者のパネルディスカッションが行われました。「仕事ぶりが丁寧で、まわりにも良い影響を与える」などの評価もある一方で、「体調の波があって難しい面もある」などの話が出ていました。「短時間勤務など多様な働き方が増えると有難い」また、働くということに固執しない生き方も…という意見も出ていました。
従来、家族会(KHJ)だけでしたが、長期化高年齢化の中で、昨年は、OSD(親が死んだらどうしようという対策を検討)今度はNode(当事者・経験者の会)など色々な支援の会が立ち上がってきています。
「いっぷく会」新事務所開設のお知らせ(6月1日~)
〒420-0071 静岡市葵区一番町50番地 静岡市番町市民活動センター内
いっぷく会への電話連絡は、従来通り 054-245-0766(中津川宅)にお願いします。
7月例会のお知らせ
日時 :平成30年7月8日(日) 13:15 ~ 16:30 (受付 13:00~)
会場 :静岡市番町市民活動センター 2F 大会議室
<連続学習会テーマ> 『 ひきこもり・不登校には親の取り組みが必須! 』
(講師)SCSカウンセリング研究所 代表理事 桝田 宏子氏
※事前の参加申し込みは必要ありません、当日会場へお越し下さい。
<参加費>今年度も赤い羽根共同募金からの助成金交付が決定しましたので
1家族 ワンコイン! 500円、 初参加の方、当事者の方 無料
尚、当日10時より準備会を同場所で行っています、是非、皆さんのご参加をお待ちしています。
《会長コラム》
近くのお寺の門前の掲示板に 出る杭は 打たれる 出ない杭は 朽ちる
と書かれてありました。私達は、日頃余りにも多くのものを朽ちさせてしまってはいないでしょうか。 ほんの少し勇気がないばかりに・・・ もっともっと声を上げましょう、世間体を気にすることなく、相手の顔色を見てばかりいないで。
初めてご参加の方、初回は体験として無料です。その後よろしければいつでも入会手続きができます。年会費は6000円で、出席した時には参加費のご負担をお願いします。
その他、いっぷく会へのお問い合わせは事務局までお願いします。
事務局 電話・FAX 054-245-0766 担当 中津川
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