活動内容
いっぷく会便り 2020年8月号
令和2年8月1日 発行
NPO法人 KHJ全国ひきこもり家族会連合会 静岡県「いっぷく会」
会長 中村 彰男
日時
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2020年7月12日(日)
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テーマ
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「静岡市ひきこもり地域支援センター紹介とひきこもりの概要」
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講師
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静岡市ひきこもり地域支援センターDanDanしずおか 相談部長 NPO法人サンフォレスト 理事長 三森重則氏
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会場
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静岡県男女共同参画センター「あざれあ」
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PDFファイル202008.pdf
7月例会のご報告
7月例会は、7月12日(日)静岡県男女共同参画センター「あざれあ」4F 研修室で開催しました。
◇準備会 10時~
12名の参加をいただきました。まず「いっぷく会便り7月号」「静岡県市町ひきこもり相談窓口一覧」「7月個別相談会案内(会場変更)」「たびだち夏季号№94」などを入れて出席者への配布、欠席者・関係機関への郵送作業を行いました。
そしていくつかの報告事項、打ち合わせをして、各種情報などについて話し合いました。あとは昼食をとりながら楽しい歓談の時間を過ごしました。弁当持参ですが、どなたでも例会に少し早めに出かける感じで参加してみて下さい。都合のつく時間からでも構いませんので、是非とも楽しいゆっくりとした時間を共有しましょう。
◆例会 13時15分~16時30分 参加者26家族28名参加(内初参加2名を含む)
◇連続学習会
「静岡市ひきこもり地域支援センター紹介とひきこもりの概要」
講師 静岡市ひきこもり地域支援センターDanDanしずおか 相談部長
NPO法人サンフォレスト 理事長 三 森 重 則 氏
1、静岡市ひきこもり地域支援センター「DanDanしずおか」について
平成27年に開設されて今年で6年目になります。静岡市在住の当事者・家族、静岡市内の学校、職場に在籍している当事者が相談対象です。(中学生までは「静岡市子ども若者相談センター」で相談受ける。)電話相談、面接相談、訪問支援、当事者の居場所、家族教室、関係機関への助言・指導をしています。まずは電話相談で
054-260-7755 火曜日~土曜日 午前9時~午後5時
詳しくは別紙パンフレット参照下さい。
2、ひきこもりの基礎知識
①ひきこもり(状態)の分類(重要な特徴でもあります)
A,精神疾患(統合失調症、不安障害、気分障害など)B,発達障害(自閉症スペクトラム症候群など)
C,社会的ひきこもり(診断名が付かない人)
実際のケースにおいて多くはこのような明確に分けることは困難なことが多く、同時に複数の疾病、障害等が見られ、かつ軽度の周辺的「グレーゾーン」の事例がほとんどです。
②ひきこもりのきっかけ、社会的背景
・思春期における周囲の環境への過剰に適応しようとする努力の破綻。
・自己防衛的にひきこもる事によって自分を守る。「回避行動」の一種。
その他多くの要因から
・ひきこもりの多くは、ひきこもり発生以前に何らかの生き難さを抱え、当事者はギリギリの努力をするが、そこに留まりきれずに一気に撤退「ひきこもり」する。
・発生のピークは18~26歳前後。この時期にひきこもり始め、10~20年そのままひきこもりが継続してしまい40代50代になってしまった当事者も多い。
・更に、今まで順調に社会生活、家庭生活を送っていた30代以降の大人が、突然ひきこもりになってしまうケースも増えている。
③ひきこもり本人の心理状態と悪循環
・自己肯定感の低さ(自己否定感)
・こだわりが強い。プライドが高い。ステレオタイプの思考。
・傷つき易さ、他者からの評価に対する敏感さ(評価される場面を避ける)
・他者(ひどいと親も)が怖い。外が怖い。漠然とした不安感、恐怖感。親、担任教師などからの無理解(ひきこもりは怠けである)の中で孤立する。(誰もわかってくれない、自分は世界一不幸だ)
・ひどい被害妄想(親は自分を殺そうと思っている。近所のおばさん達が家の前で悪口を言っている、何とかしろ。警察を呼ぶ。など) その他多様な心理状態を表し、それらが悪循環を生む。
④家族(親)の心理状態(悪循環と固定化)
・ひきこもりの子どもがいる事は家族の恥⇒早く立ち直って欲しい。隠したい。なぜうちの子だけがひきこもるのか(怒り)何か子育てに悪いところがあったのではないか(原因追及、犯人捜し)どうしたらよいか分からない、理解できない。親自身の人生設計が狂ってしまった。親戚、仕事場で家族の中にはひきこもりが居ることを打ち明けられない。近所付き合いを避ける(世間体に押しつぶされる)習い事や仕事を辞める。近所(地域)親戚の無理解で孤立する。など
⑤具体的困難さ
・自室の窓、雨戸、カーテンを開けない。窓や襖にガムテープ等で目貼りする。部屋に閉じこもり自室から出られない。ドアに鍵を付け施錠する。自室に他者を入れない。自室で食事、排便、昼夜逆転、睡眠障害、家族との会話を避ける。友人との連絡を絶つ。
・強迫的症状、執拗な手洗い、長時間のシャワー、歯磨き、消毒用のウエットティッシュを手放せない、机を触れない、机やテーブルから落ちた物を素手で持てない。自分の洗濯物を家族のものと一緒にさせない、食器を自分の物だけ特別に扱わせる、特定の行動を何度もやる、家族にやらせる、特定の物にこだわり揃えて集める、極端な偏食、食品の賞味期限や産地、放射能、農薬、品質に異常にこだわる。親の作った食事は一切受け付けない、一度使ったシャンプー・リンスは使えない、特定の分野の知識に異常なほど興味を示し詳しい、特定の考えに支配されて苦しむ。強迫症状がひどいと行動が止まる(フリーズ)
・何年も風呂、シャワーに入らない。何年も同じ服を着る。部屋の中はゴミだらけ。片付けようとすると怒る。一日中ゲームに熱中している。夜、コンビニに出かける。真冬でも半袖Tシャツ、半ズボン、布団に寝ないで畳や床に直接寝る。特定の音(部屋にある時計の秒針の音に敏感に反応する)や光に敏感に反応する。その他様ざまな現象が起きてくる。など
3、ひきこもりの支援の難しさ
・家族(親)や関係者が関わろうと働きかけをすればするほど逃げて行く
(ひきこもりの選択⇒戦線縮小⇒自殺のリスクが大きくなる)
・ひきこもりは「外部の圧力(家族、親、関係者等)からの回避」である。同時に当事者自身が自ら「このままでは駄目だ」と思い、自分自身に圧力をかけて、どうしようもなくなっている状態。自分自身への呪縛・こだわり・囚われ。
・ではどうしたらひきこもりは回復するか!(自虐的呪縛からの脱出) まず初めに
・家族(親)が、ひきこもり当事者へ理解・共感、ひきこもり状態の受容をする事。
「親子関係の改善」「親子の良い関係作り」「治療的関係作り」
「ひきこもり状態を家族が受け入れ、本人がゆったりひきこもれる環境を一旦作ることがひきこもりからの脱出の近道」
4、支援のポイント
①ひきこもりからの回復には、時間(1年~10年)をかけて多様な支援を受けなければ回復にたどり着けない事を、支援者はきちんと認識する事。⇒本人の自主的な回復のペースに合わせた支援に心がける。(支援者が慌てない、引っ張らない、乗せない)「ひきこもり回復には、ひきこもった期間と同じ時間がかかるのが一般的」
②支援には、なるべく早い(ひきこもり期間・年齢)時期に家族支援が始まり、当事者と会える関係ができた方が効果が高い。従ってガイドラインに書いてある6か月以内であっても早期に発見し家族の関わりをもった方が良い。(早期発見⇒早期に関わり、じっくり支援)
③ひきこもり支援(家族相談)の当初は、ひきこもり本人に圧力をかけたり、突然(当時者の了承なく)の訪問をして無理に会ったり、説得、説教は厳禁。
④相談機関(者)は、まず相談者(家族・当事者)との信頼関係の構築を最優先に取り組む⇒相談の継続を優先する。
⑤家族(親)との相談・家族教室参加を通じて、家での家族と当事者との関係改善に取り組む⇒間接的当事者への支援・働きかけ。
⑥ひきこもりの解決には、当事者の家族の課題も深く関わっている場合も多いので、当事者の支援、取り組みと同時に家族への支援も必要になる。⇒家族支援の重要性。
⑦家族関係が改善した時期(当事者が動き始めるタイミング)に、当事者に支援機関の相談や医療機関の受診を勧める⇒直接的支援の促し。
⑧ひきこもりは、「生きる意欲の喪失=他者との関係の拒否」であるが、当事者が生きる意欲を自主的に持って頂くことが重要(それがどのようにすれば出来るか)
⑨当事者が支援機関につながったら、ひきこもりの回復、社会参加への取組を促し実施する。⇒当事者への寄り添い(パーソナルサポート)
⑩但し、当事者が緊急に対応が必要であったり、家族が関係改善に取り組むのが困難なケースは柔軟かつ機動的に対応する体制、スキルが必要⇒統合失調症の急性期、DV、家庭内暴力やアディクション(中毒)による機能不全家族、虐待ケースへの鑑別と対応要請。
⑪以上の事を取り組むためには、ひきこもり地域支援センター単独では支援に限界がある。よって関係機関との連携、協働が必要(これはとても大切)
9月例会のお知らせ
日時 :令和2年9月13日(日) 13:15 ~ 16:30 (受付 13:00~)
会場 :静岡県男女共同参画センター「あざれあ」 4F 第一研修室
連続学習会テーマ: 『 我が子が出しているサインに寄りそう 』
講師:SCSカウンセリング研究所 副代表理事 KHJ千葉県なの花会 理事長 藤江 幹子氏
<参加費>1家族 ワンコイン! 500円、初参加の方、当事者の方 無料
尚、当日10時より準備会を同場所で行っています。会報の発送作業や家族同士の歓談
などを行っています。是非ご参加下さい。
◆新型コロナウイルス感染症の今後の状況により、変更せざるを得ない場合がありますのでお含みおき下さい。
受付当番 : □富士市以東 □静岡市駿河区、清水区 □静岡市葵区 ■藤枝・焼津市以西
■の地区の方よろしくお願いします。
「個別相談会」のお知らせ
日時:令和 2年 9月25日(金)、 26日(土)、 27日(日)
場所:新型コロナウイルスによる、会場の利用規制がありますが面談での開催を予定しておりますので後日お知らせいたします
(カウンセラー)「人間関係と心の相談舎」代表 菊池 恒 先生
相談時間 1家族=50分 80分 110分の各コース(会員限定・有料)
お申込み・お問い合わせは TEL・FAX 054-245-0766(中津川)まで
居場所となる場所を探しています。
いっぷく会では、家族も当事者も、いつでも自由に利用できるような「居場所」として使える場所を探しています。今の財政状況ではあまり負担はできませんが、適当な場所がありましたら、是非とも役員まで情報をお寄せください。よろしくお願いします。
赤い羽根共同募金の助成金が決まりました。
令和2年度のいっぷく会活動について、赤い羽根共同募金の助成金が決まりました。年間33万円です。
毎月の例会開催など会の運営には、講師料、会場費、事務費など多額の費用がかかります。
会員の皆さんには「年会費」に加えて「参加費」として負担をお願いしておりますが、それでも不足をきたすため、赤い羽根共同募金の助成をお願いしておりましたものが決定いたしました。大切に使わせて頂きたいと思います。
ひきこもり対応の応援歌
青少年交流スペース「アンダンテ」様から提供いただきましたので順次ご紹介します。
“ 説教や 脅かしが効いた 例はなし 子の立場から ものを見ること ”
“ ひきこもる 子への対応 第一は 否定しないで ひきこもらせる ”
“ ふさぐ子に 必要なのは 「安心感」 子がくつろげる場をまず作る ”
《会長コラム》
今月号の便りには、静岡市のAさんから体験記を寄稿していただきました。いっぷく会の活動がAさんのお役に立ったことも述べられており、大いに感激し嬉しく思いました。と同時にAさんが懸命に学習を重ね実践して行かれた姿が浮かび、逆に私たちに投げ掛けているものを痛いほど感じました。何時の日か皆さんの前で語っていただける機会が訪れんことを切に願って止みません。良いお話だけではなく、苦しみ悩みも皆さんから寄せていただきたいと考えております。
初めてご参加の方、初回は体験として無料です。その後よろしければいつでも入会手続きができます。年会費は6000円で、出席した時には参加費のご負担をお願いします。
その他、いっぷく会へのお問い合わせは事務局までお願いします。
事務局 電話・FAX 054-245-0766 担当 中津川
E-mail:ippuku-kai@outlook.jp
「いっぷく会便り」 2020年8月号【別刷】
今年3月をもって退会されました静岡市のAさん。息子さんが無事就労されたということです。退会にあたりまして、体験記を寄稿いただきましたのでここにご紹介します。
「寄稿文」
2017年12月に静岡新聞夕刊でいっぷく会の存在を知り、2018年4月に入会させていただきました。
息子は資格を取りたいと勤めをやめ、働いたお金を投資して勉強をやり出しましたが、思うようにならず10年以上無職の状態でした。その当時、隣の共働きの姉の家の2人の姪の遊び相手や面倒をよくみて、掃除や食事の片づけなど、家事をよくやってくれました。「いっぷく会」入会の前に2回くらい参加させていただき、学習会に参加するたびに必ず何か一つは心に残ることに出会いました。
入会して直ぐに懇親会に参加し講師の方と話す機会があり、息子の様子を話すと「そういう人は復帰がとても難しい」と即座に言われ「手伝いは自立にならない」とのお話もされました。私も息子が今の状態を変えるのかなあと思っていたので、「ああ、そうか!」と感じました。しかし、学習会へは参加されている方々がとても前向きで熱心なので、都合をつけて参加しておりました。又息子の状態についてカウンセリングを受けたくて3回ほど受けました。先生のおっしゃることの重さに辛くなり止めてしまいました。
そしてその翌月の学習会はひきこもりを体験した方が講師でした。私はこの方なら聞いてみようと、初めて質問用紙に「病院に一度も行っていないが行った方がよいか?」と書いたところ「行かない方が良い」と回答して下さいました。この事は周囲の人たちに「どうして病院に連れていかないの」と言われていましたが、以前本人に聞くと「自分は違うから大丈夫」と言っていたので、「病院へ」という気持ちは消え去りました。
次の月も体験者の丸山さんが講師でした。終了後著書の「不登校・ひきこもりが終わるとき」を購入し夢中で何回も何回も読みました。今までも何冊か本を購入しましたが、あまり本に引き込まれることはありませんでしたが、この本は違いました。何度も読み返し息子と話し、うまくいかなかった時、又本を読み返し・・。そのうち私自身が気付いていったのです。私はこの本の6章・7章が参考になりました。自分が主張してきた正当性の主張はダメだと気がつきました。私が楽になるにつれ、彼はこの本のとおり自分で歩き出しました。
この年の7月に本部の上田さんが講師で来てくださった時の資料に「縁側で日向ぼっこをしながらお茶を飲む。これが出来れば相当回復しているよ」という一文が載っていました。この言葉はずっと心に残っています。
学習会ではいろいろ学びました。みなさんとお話して一人一人違うけれど、学習会には「ヒント」がいっぱいあります。又「支援」というと福祉事務所・民生委員とすぐ結びつかないで、違う方法が作られたらと願っています。
会長様・役員の方々・会員の皆様に厚くお礼申し上げます。
息子は昨年11月から就職し、何もなかったように、当たり前に仕事に行っています。 (終)
本会の活動は「赤い羽根共同募金」の助成を受けて運営しています。