活動内容
いっぷく会便り 2021年2月号
令和3年2月1日 発行
NPO法人 KHJ全国ひきこもり家族会連合会 静岡県「いっぷく会」
会長 中村 彰男
PDFファイル202102.pdf
1月例会のご報告(学習会は中止)
1月例会は、1月10日(日)に予定しましたが、誠に残念ながら新型コロナウイルス感染拡大の状況に鑑みて急遽中止とさせて頂きました。ご了承下さい。
ただ10時からの準備会は、静岡市番町市民活動センターにおいて、10名の方の参加を頂き「いっぷく会便り1月号」を会員、関係機関に郵送作業をいたしました。
そして、連絡事項や新年度の活動などについて話し合いをさせて頂きました。約3時間にわたり休憩もなく、参加者にはお忙しい中を誠にありがとうございました。
学習会報告にかえて、本部主催の研修会に参加した研修の一部を報告させていただきます。
テーマ「ひきこもり問題の理解促進と支援力向上のための研修会」
今回はオンライン方式での開催となり、全国から家族会、社協の皆さんなど「ひきこもりの支援」に携わっている方々の参加で、定員90名いっぱいの参加でした。いっぷく会からは中村会長、中谷が参加しました。
オンライン方式の研修会は始めての参加でしたが、パソコンさえあればどこでも参加できるのがよかったです。この方式はいっぷく会でも新年度から取り入れていきたいと考えています。
1月23日(土)15時~18時30分 1月24日(日)15時~18時15分(延6時間45分)
開催にあたり、現状認識として「開催要領」に下記の通り記載されています。
『ひきこもりの問題は、社会的孤立の問題として、喫緊の課題として認識されております。
その背景としては長く社会制度の狭間に置かれ、自己責任を追及されて、どこにも支援を求められない状況がありました。来年度施行(今年の4月から)の「改正社会福祉法」では地域における包摂的な支援体制が明記され、課題解決だけではなく繋がり続けることで孤立させない支援が求められています。
しかし実践活動の中ではひきこもり支援に対して苦慮の声が多数ございます。就労や社会参加をゴールにする支援に行き詰まり、本人や家族と信頼構築に至らないことを悩む声も少なくありません。
特に8050世帯では、親の要介護や貧困といった複合的な問題を抱えるケースが多く、一機関では対応しきれない状況もございます。多機関・多職種連携がますます求められてきております。
KHJ全国ひきこもり家族会連合会では、家族会(当事者団体)として専門職や有識者と連携しながら、長くひきこもり支援を実践してきました。2017年度からは、積み上げた実績や研究結果に基づいて、支援者を対象にひきこもりに関する諸問題や支援策について研修会を実施しております。
過去の研修会参加者からの満足感も大変高く「ひきこもりの相談対応や支援実践活動の参考になった」との評価を多数頂いております。
コロナ禍の影響を勘案して、今回の研修会はZoomを用いたオンラインで2日間に渡っての開催です。
この研修を通じまして、より現場の活動に反映できる機会となれば幸いです。』
以下、家族(主として当事者と親)に関係するポイントの一部だけですがご参考に。
第1講「ひきこもりへの理解と対応、相談におけるアセスメントの留意点」
講師 KHJ本部・ソーシャルワーカー 深谷 守貞氏(社会福祉士)
・実態調査から ・本人の平均年齢 35.3歳(2002年から10歳以上上昇)
(アンケート) ・平均ひきこもり期間 9.1年
・親の平均年齢 65.5歳(年金生活をしている家族が中心になっている)
・長期高年齢化・親亡き後の不安は?
親の不安・・・経済的不安、孤立化の不安、介護への不安
本人の不安・・就労できず金銭的な面が困る、やり直す場所がない。
兄弟姉妹の不安・・・自分の将来にふりかかってくるのでは? 周囲に話せないでいる。
・ひきこもり者の苦しみ=ひきこもらざるを得ない苦しみ
①理解されない苦しみ・・・・自分でも自分の状態を説明できない。不安が幾重にも重なる。
②二重の傷つきと疲労・・・・ひきこもるきっかけに傷つき、自分自身の状態に苦しんでいる。
③自分を守るためにこもる・・これ以上傷つけられたくない。他人に迷惑をかけたくない。
④~したくてもできない葛藤の強まり・・・出たくても出れない、働きたくても働けない自分。孤立へ。
・なぜ長期化から抜け出せない? 長期化をまねく環境要因
本人の状態・・孤独感の高まりとあきらめ、意欲の低下(自力で動き出すには困難な状態になる)
環境要因・・・①家族の孤立化・・・本人が動けない、家族は動かない。=家族ごとひきこもる。
②家族の機能不全・・親子関係の悪化、断絶、暴力にまで。変化を促せない。
③社会的偏見、無理解・・社会的受け皿、相談・理解を得られる場がない。
・家族を楽にさせる。
家族が孤立せず息長く繋がり続ける。家族の気持ちのケアと本人との関わり方の学び。
・ひきこもりは悪いことなの?
悪いことという価値観は「〇〇させよう」となる。それが一番本人を苦しめる支援。
「生き方」の1つと捉える。⇒ ひきこもることで生じる困りごとに寄り添い、支えてゆく。
・家族、本人のエネルギー回復のための環境づくりを
肯定的関わりにより、家族全体を安心の関係にもっていきたい。
楽になるとエネルギーは上がる。辛くなるとエネルギーは下がる。
親自身がリラックスできる環境を。親の顔色、目つきが変わるだけでも大きな環境調整になる。
・家族会の効果。
同じ思いを持つメンバーとの出会いで「苦しいのは自分一人じゃない」気持ちを理解してもらえる仲間の存在。少しずつ変化への希望を抱くとともに気持ちの立て直しを図ってゆくことができる。
親の心理的安定は、子どもの回復への重要な要件です。
第2講「家庭と地域で取り組むひきこもり支援のコツ」
講師 宮崎大学准教授 境 泉洋氏(臨床心理士・公認心理師)
・コロナとひきこもり。
自粛生活、テレワークなどの新しい生活様式は、本人にとってはプラスに作用している部分もある
一方で、コロナの影響によって会社との繋がりが絶たれ、孤立する事例が多くなっている。
家庭で過ごす時間が増え、家族との関わりの重要性が増している。
コロナの影響による経済悪化により、社会側の受け入れる余力が減少することが危惧される。
・居場所の設置、運営状況、問題点について詳細に説明いただいた。
・家族支援がなぜ必要なのか?
「家族自身の機能回復(元気に)」 ⇒ 「ひきこもり本人と家族の関係回復(信頼の回復)」 ⇒「ひきこもり本人と社会をつなげる。」 まず家族が元気になることです。
・ひきこもる本人への支援 高知県教育委員会の自立支援「若者はばたけプログラム」を紹介、(HPよりダウンロード可)成功体験を良循環に進めてゆく、楽になり楽しくなる方向に。
第3講「きょうだいの立場から支援者に伝えたいこと」
森 幸子氏(ひきこもりの兄をもつ妹の立場から)
実家には、当事者の兄と両親が同居していた。何とか働いて両親を助けてほしい(就労させないといけない)と思い願っていた。KHJの月1回「兄弟姉妹の会」に参加。兄と両親の間で妹としての葛藤を繰り返し、兄にとって「何が幸せか」「就労だけが良い事なのか」と。今では「生きていてくれたら良い」という気持ちに変化できた。その間には、支援に繋がれていない時の孤立感が強かったが、2019年に本人が救急搬送されて入院することになり、それがきっかけで「医療と福祉」に繋がることができた。
それらの体験を通じて「支援の姿勢」「正解のないことへの肯定」「地域社会の理解」「当事者が求めている支援」などについて話されました。「伴走」のようなサポートをして頂くとありがたいのですが。
第4講「長期・年長ひきこもりの理解と支援」~ひきこもる人の理解・多様な支援方法・支援のマネジメント~
講師 日本福祉大学名誉教授 竹中 哲夫氏(臨床心理士)
・ひきこもり支援の基本的考え方(講師の場合)
人それぞれの多様な生きる状態を尊重する立場に立つならば、長年ひきこもる人の生き方も人生を送る一つのあり方として尊重しなければならない。そこで
①社会参加の希望のある人には社会参加の道を歩む支援を行い。
②今の暮らしを続けたい気持ちと社会参加の気持ちが葛藤している人には、葛藤する気持ちを尊重して時に応じた多面的な支援を行い。
③当分社会参加を考えたくない人には、その人が納得する生き方をともに考える支援を行う必要がある。
④このように支援者は、社会参加するしないにかかわらず、ひきこもる人が安心して生きていけるようひきこもる人との相互理解と協力関係を築き「今より少しずつ自由になるゆるやかな支援の考え方」を基礎に、具体的な手立てを考え実践する。
⑤このような考え方の基盤には、先に紹介した共生社会の理念が想定される。共生社会は、人々が相互に依存しながら、かつ主体的意思を尊重し合いながら共に生きていく社会であると思う。
・親子間の適正距離(ほどよい距離)を探り当てる。
接近しすぎは強い反発・無視を招きます。離れ過ぎは対話の回路を失います。
適正な距離は、「さりげない日常挨拶を」「世間話を楽しむ」「話しかけには答える」「関心は持つが、批判、叱責、議論、説得は避ける」「求めがあれば参考意見を」「機会は作るが押し付けない」「自己決定を尊重する」「親切な叔父、叔母的距離感覚を取り入れる」などが良いですね。
・その他、暴力への対応、居場所、就労への支援などたくさんのことをお話して頂きましたが、最後に「幸運な偶然を活かす」気長に、急がず、あきらめず続けるうちに、いくつかの望ましい条件が重なって閉ざされていた視界が開けてくる「幸運な偶然」に巡り合う・・・そんなことを信じて先ずは取り組みを。
3月例会のお知らせ
日時 :令和3年3月14日(日) 13:15 ~ 16:30 (受付 13:00~)
会場 :静岡県男女共同参画センター「あざれあ」5F 501会議室
連続学習会テーマ:『人生のエネルギーと希望 (親との信頼感) 』
講師:SCSカウンセリング研究所 代表 桝田 宏子氏
<参加費>1家族 ワンコイン! 500円、初参加の方、当事者の方 無料
尚、当日10時より同場所で準備会を行っていますので。お気軽に是非ご参加下さい。
◆新型コロナの状況により、変更せざるを得ない場合がありますのでお含みおき下さい。
受付当番 : □富士市以東 □静岡市駿河区、清水区 □静岡市葵区 ■藤枝・焼津市以西
■の地区の方よろしくお願いします。
「世話人」を募集しています!!
この会も会員が75名ほどになっています。皆さんも身近でご経験のあることと思いますが、町内会、PTAなどと同じように会の運営にはたくさんの手間隙がかかります。現在、会則に則り、会長、副会長、会計、会計監査などと合わせて「世話人」がいて、できる範囲で分担をして頂いています。しかし役員も、すべて当事者を抱えた家族でありますので限界もあります。このため多くの方に少しずつでも分担していただきたいと思っています。「これ位なら手伝いますよ」という方がおられましたら是非とも申し出て頂きたいと思います。どうぞよろしくお願いします。 (事務局)
「困っても困らない」 浜松医科大付属病院長 松山 幸弘氏 (2021/1/11静岡新聞「窓辺」より)
私は常々「人は様々な困難に遭った時にどう考え、どう対応するかで評価される」と考えています。
「どうしようもない」「困ったことだ」と思ってばかりいると心が狭くなり知恵も出なくなります。
その結果、原因や責任を他へ転嫁し、不満で心は暗くなり不平でわが身を傷つけていきます。一方で、困難を困難とせず思いを新たに決意を固く歩んでいけば、困難がかえって飛躍の土台石になることも少なくありません。「困っても困らない」。要は考え方一つです。
人間の心は伸縮自在であり、困難な時にこそかえって自らの夢を開拓する力を発揮します。コロナ禍の経験で、自分自身また成長できたように思います。こんな時こそ著名人がどのような考えで人生を歩んできたか知りたくなり、松下幸之助の「道を拓く」、タル・ベン・シャハーの「ハーバードの人生を変える授業」、ジム・ドノウ”アンの「誰でもできるけれど、ごくわずかな人しか実行していない成功の法則」を読んでみました。全てに通じるのは、
①感謝の気持ちを大切に ②素直に、謙虚に ③いつも明るく、ポジティブ思考 ④自分を信じて
⑤思ったらすぐ実行 ⑥熱意を持って精いっぱい ⑦損得で動かない ⑧夢を持って
⑨困難を困難と思うな ⑩一陽来復 ―でした。
皆さん、胸に手を当ててじっと考えてみてください。きっとお役に立てる言葉だと思います。またそうあってほしいと願っています。 大変に勇気を与えて下さるようお話でした。
講演会『こもりびと』を語る ~テレビドラマ制作の背景~
日時:2021年3月27日(土)13:30~16:30 (受付13:00~)
会場:静岡県男女共同参画センター「あざれあ」5F 501会議室
定員:50名 参加費無料
基調講演:講師 ジャーナリスト 池上 正樹 氏
昨年11月NHKで放映されましたドラマ「こもりびと」は、ひきこもりをテーマにした初めてのテレビドラマとして大きな反響を呼びました。 その制作の監修を務められた池上氏に完成までの過程および意図を語っていただきます。
対談:池上 正樹 氏 & 上田 理香 氏 KHJ 全国ひきこもり家族会連合会 本部事務局長
~家族会と行政の連携を求めて~
★会員も含めて参加希望者は必ず事前に申込み下さい
《会長コラム》
大寒も過ぎて季節は確実に春へ向かっております。今朝本年初めてメジロの姿を梅の木で見掛けました。
いつも番で戯れている光景は微笑ましく羨ましくもあります。我が家もこうありたい、世の中の多くがこうであったならと見果てぬ夢は続きます。目的もなく30分1時間気が向けば2時間も歩くことのできる体に感謝し、その効能を楽しんでいます。
初めてご参加の方、初回は体験として無料です。その後よろしければいつでも入会手続きができます。年会費は6000円で、出席した時には参加費のご負担をお願いします。
その他、いっぷく会へのお問い合わせは事務局までお願いします。
事務局 電話・FAX 054-245-0766 担当 中津川
E-mail:ippuku-kai@outlook.jp
本会の活動は「赤い羽根共同募金」の助成を受けて運営しています。