活動内容
いっぷく会便り 2020年4月号
令和2年4月1日 発行
NPO法人 KHJ全国ひきこもり家族会連合会 静岡県「いっぷく会」
会長 中村 彰男
PDFファイル202004.pdf
3月例会のご報告
3月例会は、新型コロナウイルス問題で予定した例会を中止しましたので下記の講演会の内容について報告します。
2月29日(土)13:30~16:30 於;あざれあ 501会議室
テーマ「 8050問題に備えるサバイバルプラン 」~ 親亡き後を生きるために ~
講師 ファイナンシャルプランナー 畠中 雅子氏
先ず「サバイバルプラン」へ取り組みに当たっての重要なポイントについて話された。
・まず肝心なことは「お金があるとかないとかの問題ではない。親の覚悟がどれだけあるか」です。
・とにかく残された子どもが「どう生きてゆくか」を考えてやること。
・今すぐにできることから取り掛かる気持ちで、先送りできなくなってからでは遅いのです。
・そして「でき難いこと」「嫌なこと」から始めるのがとても大切です。
・また、今日の話は経済のことが中心ですが、食事の支度からゴミ出しまでの自立した生活ができるように早くから親が正しく手をかけることです。家事の能力がつけば生活費も安く安定します。
色々な面で、親の覚悟・変化も求められます。
1、アドバイスを始めたきっかけ
1992年、無料の相談センターで、末期がんの母親からひきこもりの息子の相談を受けた。
その息子さんは自分と同じ年だった。相談内容が衝撃的でショックを受け、その時に役に立てなかったことを反省・後悔して「働けない子ども」がいる家庭向けの生活設計アドバイスをスタートさせた。
しばらくは一人で活動していたが、精神科医斎藤環先生の目にとまり2009年初めて「ひきこもりのライフプラン」というシンポジウムを開催。想像以上に多数の参加者がありびっくりした。
シンポジウムの内容は、内閣府のひきこもり冊子の一部に収録されました。
2、サバイバルプランとは? そして立てる意味は?
サバイバルプランとは、親が持つ資産を巧く活用(配分)することで、子どもが一生食べていける「ライフプラン=サバイバルプラン」が成り立つかを模索するものです。
子どもが「働けない状態が続くと仮定」して生活設計を考えるのがサバイバルプランの前提です。
そして「生活保護の受給は最終手段」と捉え、親が持つ資産を活用した解決を目指すことです。
プランを立てる意味は、親側に資金計画に目を向ける「覚悟」を持ってもらうことにあります。
そして、先送りしても資金プランが好転する可能性はないことを実感してもらうことにあります。
親が「正しく手をかける」ほど、遺された子どもの暮らしが安定することを実感し、更に、子どもが就労することはあきらめても「穏やかに暮らす」ことを目指してもらうことにあります。
3、親の年代で変わる課題
今日のテーマは「8050問題」ですが、「6030問題」「7040問題」ということもあります。早い段階から考え特に子どもが40代に入ったら親が70代、生活の立直しの時期でもありこのプランを立てる必要がある。
「6030問題」では、
・定年退職
・60代以降の収入確保
・親の親の介護
・親の親からの相続
・子どもの働き先の検討
・就労支援の検討
「7040問題」では
・住み替え先の検討
・住み替えのラストチャンス
・信託制度活用の検討
・サポート先の確保
「8050問題」では
・生前整理
・介護・認知症リスク
・死亡リスク
・遺言書の作成
・別世帯の子どもへの依頼事項の検討
4、現在の生活状況の確認と留意点
・年間の赤字を正確につかむ。年間の赤字額を知るのは必須です。それにより家計の見直しも検討する。
固定資産税、車の関連費用、冠婚葬祭費用など「特別な支出」も結構あるものです。
・親は最短でも「男は90歳」「女は95歳」を寿命と考えて、子どもにどれ位遺せるかを検討する。
(長めに考えるのがよいことで、短く考えるのはリスクです)
・「貯金簿」(口座別残高)を利用して、貯金残高の減るペースをつかむことが重要です。
(2ヵ月毎又は3ヵ月毎などの残高を書き出して増減の変化を見る)
・親の人生の終わりに「いくら位の資産が残りそうか」を見積もることが重要です。
・「子どもの寿命を考えた住い」の確保。家は確実に相続できる? いつまで住める? など。
・電気、ガス、水道、電話代などのライフラインは、子ども名義への変更を検討する。
(支払いさえ怠らなければ名義は親でも子どもでも構わないので、早めに変更しておくのもよい。
お金があっても手続きをしないで自分の家のトイレにも入れないという在宅ホームレスにならない)
・国民年金保険料を払う? 免除を受ける?(障がい等級1・2級は納付免除受けられる)
・兄弟姉妹が、どこまでお金や手続きの援助ができるか検討する。(できることと、できないことがある)
5、親の生活設計について考える(病気や介護への備え。終の棲家を考える)
・介護が必要になったら? 認知症になったら?
誰に手続きを依頼するか? 介護に備える貯蓄がどれくらいあるか?
・入院する際は、誰が保証人で、誰が身元引受人になれるか?
「身元保証」「死後事務委任」これらの制度を調べる。(代行する業者もあります)
・要介護状態になった場合 ⇒ 早めの住み替えがおすすめです
・「自宅介護=安い」「施設介護=高い」と決めつけずに、元気なうちに両方を比較検討する。
(介護費用の結果(損得)は、死亡時に判明する)
・「特養」は要介護3になるまで、申請できない。
(介護型ケアハウスや介護付有料老人ホームなどに住み替えられるか、検討する。)
6、財産の引継ぎ方法を考える
・家族(民事)信託を検討する。
家族信託とは;親(=委託者)が信託契約や遺言書により 信頼できる人(=受託者)に対して預貯金や土地などの財産を移転(=名義の変更)するなど、受託者に信託財産の管理を任せるしくみ。
(信託の仕組みを使って、相続の不公平感を和らげる方法もある)
例えば)親が亡くなった時点の相続では、自宅はひきこもりの子が相続するが、ひきこもりの子が亡くなった後の継承は「兄弟姉妹、あるいは兄弟姉妹の子にゆずる」と予め約束する方法。
・保険を活用した資産継承
相続対策には終身タイプの保険を活用(働けない子にも働いている子にも、遺したい金額を分けられる。更に遺留分に縛られず、遺したい子どもに保険金を遺せる。)
「生命保険信託」なら、遺したい子どもに、遺したい金額を確実に遺せる
保険を使った定期贈与(毎年110万円を目途に、生存給付金で贈与してもらうプランがある)
生命保険の活用事例
①JA共済「一時払介護共済」 万が一の介護にも備えられて、介護を受けずに亡くなった場合には、支払った金額と同額の死亡共済金が受け取れる。
②ぜんち共済「ぜんちのあんしん保険」 知的障がいや発達障がい、ダウン症などの方とその親族が加入対象となっている総合保険。(詳細略)
7、支援を第三者に依頼する場合
・成年後見人制度の利用は?
「法定後見」と「任意後見」がある。ひきこもりの子どもの場合は「任意後見」を検討することになるが利用する期間が長くかかる費用が高額化。
・後見制度支援信託とは?
後見人による財産の侵害を防ぐために、日常生活に必要な資金を除いて、信託銀行に預ける仕組み。
・社会福祉協議会の財産管理も検討
金額の条件など、いくつかの条件がある
8、子どもの生活、諸手続について
・ひとり期の生活費とこづかい
住まいがあれば、ひと月10万円以内。賃貸の場合は家賃をプラスした金額を目安に。
(住居費の有無が生活設計に大きな差を生む)
固定資産税や国民健康保険料は子どもの口座に少しづつ入金して、未払いを防ぐ。
(贈与税の対象にならないように年間110万円までに)
こづかいを渡すのはOKだけど(親の収入に見合ったものに)生活レベルが高くなり過ぎないように。買い物依存症気味の子どもの場合は治療が先ですね。
・諸手続き
金融機関、保険会社などの連絡先リスト、口座番号リストを作成しておく(貯金簿で代用)
困った時にはどこに、どのように相談するべきなのか、ノートにまとめておく。
(緊急時の連絡先は玄関に貼っておくとよいですね)
自治体の窓口に出向いて(外出できる場合)手続場所や手続き方法を教えておく
後見人を頼むなら、親が健在なうちに後見人に引き合わせて、関係性を築いておくとよいですね。
概略 こんな話を頂いた。それぞれの内情がある事ですから参考にして取り組んだら良いでしょう。
例会中止のお知らせ
新型コロナウイルスの問題が深刻な状況になっています。
3月の例会も中止させて頂きましたが、これに続いて5月までの例会は中止させて頂くことに決めましたのでお知らせいたします。
どうぞ感染などなきように予防に努めて下さい。
次回は 6月14日(日)とさせていただきます。ご承知ください。
(これを変更せざるを得ない場合は再度お知らせいたします)
無条件肯定とは・・・
わが子がひきこもりから回復するには、安心・安全の環境を風土として根づかせることが最大の課題でした。そのためには「正論を言わないこと」「叱咤激励をしないこと」そして、あと一つが「無条件肯定」です。
「無条件肯定」とは正式には「無条件の肯定的関心」と言います。
心理学の巨人、カール・ロジャースが提唱した考え方です。いい子として肯定するのに「〇〇であるあなたなら」という条件をつけるのが、条件つき肯定で、たとえば、「お手伝いするあなたならいい」「働くことに前向きなあなたならいい」といった方法がこれにあたります。
これに対して、無条件肯定ではこれらの条件はいっさいつきません。「口をきかなくても、手伝いをしなくても、働かなくても、ひきこもっていても、あなたが生きていてくれるだけでいい」。
このようにすべての条件を完全にはずして肯定していくのが無条件肯定です。
親が無条件の肯定でわが子の話を聴こうと心に決めていれば、たとえ家庭内緘黙(家庭内で押し黙っていること)の状態で話がいっさいできなくても、また、部屋からまったく出てこなくても、親の無条件肯定が生み出す安心・安全の雰囲気が、ひきこもっている部屋の扉を越えてわが子に伝わるものです。
無条件肯定は、「希望」「意思」「目的」「有能性」「アイデンティティ」の5つのプロセスのすべてにおいて、親が守っていくべき重要な要素となります。
では、わが子に対して具体的には、どのような形で無条件肯定を行うのでしょうか。
魔法の言葉「そう」を使うことを意識してください。
たとえ自分の価値観とは相いれないなと思っても、「そう」「そうなのか」「そう思っているんだ」と一度受け取り、わが子の話を共感的に受け入れて聴いていくのです。
わが子の価値観に同調したり、染まったりする必要はありません。聴くだけでいいのです。
このとき、大切なのは、「聞く」のではなく、「聴く」こと。門構えの「聞く」のではなく「聴く」こと。
門構えの「聞く」は門のまえで耳を傾けているだけですが、「聴く」は「十四の心」で耳を傾けることになります。あなたも「十四の心」で聴くつもりになって、わが子の話に耳を傾けましょう。
何を言っても反論されたり怒られたりすることもなく、共感的に受け入れてもらえること自体が、安心・安全な環境そのものです。その安心・安全な環境のなかで、わが子の心に親への信頼感と、そして、自己肯定感が徐々に生まれていくでしょう。
SCS 桝田智彦氏著「中高年がひきこもる理由」より一部抜粋
《会長コラム》
私たち戦後世代は、70年以上直接的には戦争を体験せずに生きてこられた、歴史上稀有な世代と言えます。これも先の無謀な戦争に駆り立てられ無念にも斃れていった300万人を超える同胞の見守りあってこそと信じています。世界を見渡してみれば1日として戦火の止むことはなく、毎日多数の人命が失われています。特に近年は大国を中心に異常とも思える指導者が輩出し、手前勝手な言動を披瀝しています。そんな中で降って湧いたような今回の新型コロナウイルス騒動、初期段階での情報の隠蔽、情報開示の遅れが拡大の最大要因となったことは今や明らかです。世界各国の協調連携がズタズタになりつつあるこの時期に起こった騒動、なにか偶然ではないような気がしないでもありません。まさかと言わざるを得ないパンデミックとの遭遇、とにかく一日も早く収束に向かって欲しいと祈らずにはいられません。
初めてご参加の方、初回は体験として無料です。その後よろしければいつでも入会手続きができます。年会費は6000円で、出席した時には参加費のご負担をお願いします。
その他、いっぷく会へのお問い合わせは事務局までお願いします。
事務局 電話・FAX 054-245-0766 担当 中津川
E-mail:ippuku-kai@outlook.jp